妥当な答えを、
空は綺麗に澄み渡ってる。雲もない。
なのに、華は機嫌が悪いらしい。
せっかく2人で映画を見て、喫茶店でお茶を飲んでいるというのに。
映画はなかなか面白かった。華が好きそうなアクションだった。
なんの前触れもなく、華がゆっくりと頭をもたげる。
目が座っている。
「さっき気付いたんだけどさぁ、」
「うん?」
こちらを見ようとしない華の横顔。まつげがキラキラ光る。
「目、悪いの?」
「そう、悪いの。」
彼女には教えていなかった。特に教える必要はなかった。
「なんで?」
「『なんで?』って、普通聞かないだろ。」
「そうかなぁ。」
「そうだよ。」
「なんで?」
「.....もういい。」
いつもの華だった。
わけがわからない。
俺は先ほどの華のようにテーブルに伏せた。
「....寝たの?」
「そう、寝たの。」
伏せたまま答える。
「なんで?」
ここまでいくとちょっとまずい。
いつもよりひどい。
「何、お前変なモン食べたの?」
真面目に聞いたのに、彼女はこちらを見ずに、口を尖らせる。
「今質問してるのは私なんですー。」
「酔ったの?」
「答えて下さいー。」
頭に来たので無理矢理ぐい、とこちらを向かせる。
「お前がそうやって何でも質問してくるからですー。」
「そうなの?」
「そうだよ。」
口がもとに戻った。
普通にこっちを向いた。
目力が強くなったようで、今度は俺が華を見られなくなった。
「ねぇ、」
「うん?」
「なんであたしを彼女にしたの?」
「え、なんでって...」
「ねぇ、なんで?」
どうやら本気なようだ。
俺達の鉄則。『相手のテンションにあわせろ。』
やぶったら『しっぺ10回の刑』。
俺も本気で答える。
「おかしな子だったし、面白かったし、なにより、」
俺の中で大切な人だったからだよ。
「だいぶクサい台詞ですが。」
「それしかいいようがないからねぇ。」
「あたし、大切な存在ですか?」
「そうですね。大切ですよ。」
にっこり笑うと、外を行き交う人たちを眺めながら華は呟いた。
「あたしもね、」
「え?」
「山城君は 大切だよ。」
なによりも。
俺の幸せは、華の幸せ。
私の幸せは、山城君の幸せ。
FIN