それはもう知れたこと




「誕生日何が欲しい?」


俺は隣にいる好きな人に問う。


今年もまた、いい返事がきけることを祈りながら..。


真っ白だったカッターシャツがみかんみたいな色になった頃、


彼女はすまなそうな顔をしながら俺のもとに走って来た。


『ごめんね、部活ちょっと長くなっちゃって..。』


いや、大丈夫、と俺は言い、ゆっくり歩き出した。


彼女は足が長いのに、歩幅は限り無く狭くて、一緒に歩くのはかなり困難だ。


しかし、もう6年も一緒に歩いている、慣れてしまった。


そして今、彼女に聞いているのだ。この後1年間を左右する、その質問を。


「えっ、何がいいだろう...。何でもいいよ。」


ちょっと驚いて、俯いてしまう仕草が可愛くて仕方ない。


「『何でもいい』っていうのが一番困るって。」


「うぅん...。じゃぁ、文房具とか、かな。」


「またそれかよー。」


そう言うと彼女はまた俯いてしまった。真っ赤になって。


俺は落ち込んで彼女のマネをして俯いた。


真面目なのは、小学生の時から変わらなくて、彼女は今年も同じことを言う。

去年は『ノート』、一昨年は『ペンケース』、その前は『シャーペン』だった。


小学生の時はそれで結構いっぱいいっぱいだったが、今だったらもっといいものが買えるのに、

そいつは今年も同じものを頼んでくる。


なぜなら....。


「おーい!!!」 顔をあげると、遠くにあいつがいた。


6年間ずっとライバルであるあいつに。


そいつの爽やかな笑顔が、どんどん、どんどん近付いてくる。


その時間ほど嫌なものはない。


その間、隣にいたはずの彼女があいつのもとに走って行く。


運動するのは死ぬほど嫌いなくせに。


「榮(さかえ)くん!」


今までとは全然違う反応。俺の時とは違う声。


「いや〜中村、今日もごめんな。奈々がわがまま言うから。」


「いいよ、大事な彼女だろ、迎えに行くくらい余裕。」


余裕なわけねぇよ。なんで好きな人を彼氏のとこまで送んなきゃなんねぇんだよ。


なのに、榮はいい友達だから断れないんだ。


男の俺から見たって顔も性格も良いし何でもできるし。


だから、奈々も榮に惚れた。


「ねぇ、榮君。」


控えめなのに完全に甘えが聞こえるのは何故だろう。


「今度の誕生日に、この前言ったネックレスが欲しいの。」 


中学校に入って付き合いはじめてからと言うもの、毎年奈々は榮に一番欲しいものを頼み、

ただの友達の俺には悪いから、と適当なものを頼む。


そんなことはもう知ってる。

だけど来年はもしかしたら、奈々が一番欲しいものをねだられるようになっているかもしれない。






いいさ、今年はそうやって一人占めしていろ。


来年こそ、来年こそは。




FIN 




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一途は美徳。
奈々ちゃんはものすごい美人ではないかと思う。
そして、榮くんはものすごいかっこいいと思う。
だけどはるとしては中村君がいいなぁー。




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