夢とともに
  


どうしても、先生のそばにいたいと思った。

好きな人だって今まで普通にいたけど、今回それがたまたま学校の先生だっただけで、

年齢の差とか別に関係なかった。

だって先生は勉強できなかったあたしを助けてくれたし。

授業サボってるあたしの話を聞いてくれた。

誰にも相手にされなかったあたしに本当の友達ができたのは先生のおかげだった。

先生はあたしの人生を照らしてくれた。

先生はあたしの、希望の光だった。






「先生。」

いつもみたいに職員室に行って、先生を呼ぶ。

あたしに気付くと、先生はさらりと微笑んだ。

みんなは先生を先生としか見ないから気付かないけど、結構かっこいい。

「どうしたー?また世界史わかんなくなった?」

「違います。」

ちょっと足が震えてきた。

「なに、なんかあったんか?」

心配そうな顔。こんな顔はあんまりさせたくないのに。

「付き合ってください。」

「...は?」

「付き合ってください。」

「ちょっと待って。...大沢先生ー、進路指導室今空いてますかー?」

先生は廊下から職員室に首を突っ込んで叫んだ。

大沢先生はちょっとしてから、同じように叫び返した。

「えっと...あー3番空いてます。使いますかー?」

「はい、よろしくお願いしますー。」

行こう、と先生は小さく言った。





進路指導室をこんなことに使っていいのかわからないけど、先生とあたしは向かい合って座った。

「んで、なに?」

「付き合ってください。」

あたしは馬鹿の一つ覚えみたいに同じことしか言えなくなってた。

「それは、買い物とかに付き合うの付き合うじゃなくて?」

「先生の彼女になりたいです。」

「う〜〜〜〜〜〜〜。」

先生は頭を抱えて伏せてしまった。

「あのね、わかってると思うけど、俺らは先生と生徒なわけよ。

どんなに仲良くなっても頑張っても今、それは変わらんわけ。」

「知ってます。」

先生は顔をあげてくれない。

「しかも、高校だとね、生徒は先生にとってお金をくれる商売相手なのね。」

「はい。」

やっと顔をあげて先生はこう言った。

「手を出したらクビになるんだよ。」

下を向いて、涙が出そうなのを必死でこらえた。

ここで泣くのは女として卑怯だし、先生を困らせるだけだとわかっていた。

「先生は、」

「ん?」

「あたし好きじゃないですか?」

「クビになるとか関係なしに、あたしを女として見られませんか?」

ガタン、と音がした。

目の前に合ったテーブルが暗くなった。

顔をあげると、先生が立ち上がっていた。

「見ちゃうから、」

「え?」

「女として見ちゃうから困ってんだけど。」

逆光でさっきはよくわかんなかったけど、先生は両手で目を隠していた。

「とりあえず、座ってください。」

あたしは先生の肩を掴んで、ゆっくり座らせた。

なんか、泣いてるようにも見えた。

「もし今あたしと先生が、生徒と先生じゃなかったら、」

「付き合う?」

先生は目を隠したまま、また俯いてしまう。

先生は何も言わない。

あたしも何も言わない。

白い沈黙があたし達を包んだ。






「坂井、」

「はい。」

少し経ってから、先生は俯いたまま言った。

「約束して。」




「俺らは先生と生徒。」

「はい。」

「だけど付き合ったら彼氏と彼女になる。」

「はい。」

「彼氏と彼女になったのがバレたら、俺の未来も坂井の未来も怪しくなってしまう。」

「はい。」

「だから卒業するまで、絶対に誰にもバレちゃいけない。」

「はい。」

「それってだいぶ辛いと思う。」

「はい。」

「親や、兄弟や、友達にもたくさん嘘つかないといけなくなるかもしれない。」

「はい。」




「それでも俺と一緒にいてくれる?」




「先生、顔あげて。」

ゆっくり顔をあげる先生。

ちょっと幼い表情。

「先生が彼氏になったらなんて呼べばいい?」

自然と頬がゆるんだ。先生も泣き笑いみたいな顔になった。

「りょうた。」

「坂井が彼女になったらなんて呼べばいい?」

よく考えると先生とは10歳以上歳が離れていた。

なのにここにいる先生は、あたしよりも頼りなくて、

掴んでないと消えてしまうような錯覚に陥った。

「ゆうき。」




「ねぇりょうた。」

「なに?」

「あれなに?」

「え?」

先生が私の指の先になにがあるのか確かめる前に、あたしはその右ほほに口づけた。

もうこれで先生は何も言えなくなった。







FIN



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初、先生と生徒。その後のおはなしもあります。
だってね、夢で大変なことが起きたんですよ。
もうびっくりしたー。でも幸せな夢だったような?
はるは、時に2度寝するとすんごい夢見るんです。
休みの日だけ、みなさんお試しあれ。




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